曽根崎心中





「曽根崎心中」は醤油屋の手代徳兵衛が友人に騙され馴染みである曽根崎の遊女お初と天神森で心中する事件を元に、近松門左衛門が短時間で書き上げた人形浄瑠璃です。当時、経営に行き詰っていた竹本座はこの作品が大当たりして、一気に座を黒字経営へと転換させただけでなく、人形浄瑠璃隆盛のきっかけともなった作品ともいえます。時代は元禄16(1703)、赤穂浪士の討ち入りのあった年のこと。しかし、心中する者が多発するなど社会現象となるにいたり、1723年に幕府は曽根崎の上演を禁止し、心中した者の葬儀を禁止するなどの措置をとった。以来、昭和30年まで人形浄瑠璃文楽での曽根崎を見ることはなかったという作品でもあります。復活上演は歌舞伎に先を越されたものの、三味線弾きの野沢松之輔師が作曲し、現在に至っています。

 

浄瑠璃作者はあの近松門左衛門。近松は103編の戯曲を書き、その内時代物は79、世話物は24となっていて、世話物の内心中物は13を数える。近松イコール心中物という概念はこのあたりにありそうな気配だが全作品の1割が多いかどうかは判断を皆様に委ねたい。江戸時代からみて過去の時代を描いたものが時代物、現在の時代背景で描いたものが世話物といい、いわゆる庶民にスポットを当てたものを世話物という。庶民にすれば、身近な話題のものが小屋に掛かるので親しみが涌くというもの。よく、テレビのワイドショー的と称されるのもこの所以だろう。

 

2月の文楽は、吉田簑助師匠の文化功労者顕彰記念と銘打ち、簑助師匠がお初を演じる曽根崎心中が夜の部となる三部制の公演。一部、二部とも連日多くのお客様が詰め掛けていた。17日間の公演、三部はすぐ完売という状況。お初を簑助、徳兵衛を桐竹勘十郎というコンビ。以前まで、吉田玉男、簑助コンビで長年ファンを涌かせ続けた作品は、文楽の女形人形には足を付けない仕来りを破り、初めて女性に足を付けさせた点でも興味深い。

 

そう、女形の人形には足がついていないのである、文楽では。天満屋の段では、軒下に隠れた徳兵衛に素足を出し、自分も一緒に死ぬと初は徳兵衛に自らの意思を表し、徳兵衛は足首で喉を掻き切る仕草で応えるシーンが床本にあり、観客に訴えるのは足が必要であろうという発想からこれは生まれたもの。

 

文楽は様々な時代の流れに身をおき、伝えられ、そして応用や変化を加えながら伝承されてきた芸能でもある。伝統芸能というと作られたときのものをそのまま受け継いだという意識を持つ方もいらっしゃるだろうが、果たしてそうではなく、変化しながら今に伝えられている。そこに、古きよきものと新しいものが融合して、次へと伝えられていく。

 

今回の曽根崎心中をご覧になられて、感動してしばらく椅子から立ち上がられずにいた、という女性の声も多く頂いた。近松作品の野中でも初期の作品で、近松にありがちな複雑な人間関係もなく、友人と思った男に騙され金を取られた男に遊女が自分の身も心も捧げ心中するという、純粋な気持ちが全編を覆っているからに違いない。

 

さて、次に簑助師匠のお初を見られるのはいつになるだろう、、、。





calendar
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28      
<< February 2010 >>
selected entries
categories
archives
recommend
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM