
開演ブザーが鳴る。
いつもならフロア担当者と連絡を取りながら、スタンバイ状況をみて開始のキューをだす。
今回は、文楽の実演だけでなく、対談しながら途中で過去の映像を回しながら進める初めての試みを導入。
毎度ながら初めてのときは緊張する。
桐竹勘十郎さん、吉田玉女さん、二人の若手実力者。
文楽というのは50代でも若手!という。恐ろしい世界ですね。
そのお二人が、お二人の師匠である故吉田玉男、吉田簑助という両人間国宝による、
17年ほど前の「曽根崎心中」の映像をもとに、
「文楽の伝統を受け継ぐ」とは何なのかをテーマに語り合うという企画。
第一部で名人たちの映像をお客様におみせ、第二部ではお弟子さんが実演する。
こんな無謀な企画は・・・、勘十郎さんに笑われたが、最後は納得して頂き本番を迎える。
舞台の広さ、少ない予算、映像、限られた条件の中での実施。
この時世では伝統文化に予算がつきにくい。
過去の映像による対談が90分、道行の実演は30分。
「伝統を受け継ぐ」テーマ性から、時間割がこうなる。
実演が長いのが本来、という意見もあったようだが、
コアのテーマから「受け継ぐ」は事前の解説がなければ成り立たない。
今後もこの形式で考えている。
ただ、人形だけではなく、
文楽の場合は三業から成立しているので、床(太夫、三味線)にもスポットを当てる予定。
予算が少ない。ゆえにスタッフに人的余裕などない。
プロデューサー、ディレクター、マネジメント、すべてを兼務。
特に映像の編集と本番での映像出しは神経を使いすぎ。
反面、編集に懲りすぎていたという批判もアンケートにある。
過ちを改めるのは憚らない。
いいものを提供するための策は常に考え続ける。
お客様あっての芸能。
文楽の本質に少しでも触れた気分をもって頂けたら、幸い。
このあと文楽のイベントは、相生座、素浄瑠璃、ルネッサながとと続きます。