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油井正一

 



1960年代の終わり頃、クリーム(GREAM)の音楽に狂うほど聞き込んでいた時期があります。ロックも変革期を迎えていた時代、プログレッシブなどと表現され、ロックンロールと一線を画すグループが数多く生まれました。特に1曲の演奏時間が長くなりましたね。3、4分ほどだった曲が、15分や20分という長い曲を持つLPも出始めました。その中のグループにクリームがいました。ジャック・ブルースのベース、ジンジャー・ベイカーのドラム、そしてエリック・クラプトンのギターという3人編成。フィルモアでのライブ録音はレコード盤が擦り切れて、再び購入するまで聴きこみました。なんといっても彼らの特徴は、主題が終わると同時に、インプロビゼーション、つまりアドリブ展開の妙の素晴らしさです。クラプトンだけが表に出ているように錯覚しますが、実際はそうではなく、三者三様の表現が他の二人の表現に触発して展開されて行く様がスリリングで、ロック音楽の中では初めて聴くスタイルに興奮し、アドリブのフレーズさえコード進行を覚えるまで聞いたものです。プログレッシブの代表のようなピンク・フロイドが計算し尽くされた楽曲に対して、クリームの3人はスタジオ録音よりライブを重視し、主題はいつも同じであっても、その先はどうなるのか分からない展開にワクワクしたものです。そんなクリームの音楽に対して、ジャズ評論家の油井正一さんが、すでに廃刊となったミュージック・ライフ誌でクリームの音楽性を絶賛したことがありました。1968年頃のことで、そのアルバムは「WHEALS of FIRE」、邦題は「クリームの素晴らしき世界」でした。このアドリブはいわゆるインプロビゼーションであり、ジャズの世界のもので、ジャズのプロが聞いても素晴らしいというのです。その記憶が残り、油井さんが1973年頃からFM東京で、「アスペクト・イン・ジャズ」という番組を担当され、欠かさずエアチェックし出しましたこの番組がボクにとってJAZZを聞き出すきっかけとなったものなのです。

 

ジャズ音楽の面白さって、人それぞれで、楽しみ方はたくさんあります。ボクにとっては、あのリズム感やアドリブの妙味がまずは気に入りました。特にドラムスのトップシンバルの小刻みに紡ぎだしていくあのリズムは、ロックのそれとは全く異なり、手足の4つがまるで別の生き物のように感じられ、ドラムはロックよりジャズを演りたい願望が大きくなっていきました。それはともかくとして、リズムセクションといわれるピアノ、ベース、ドラムのリズムに、トランペットやサキソフォンが加わり、サウンドの広がりたまりません。また、当時のジャズのレコードでは必ずといっていいほど、録音日が記載されています。これは、過ぎ去った時代になっても気に入ったジャズメンの成長や変化を感じることが出来ます。バードの項でも書いたラバーマン・セッションなどその頃はバードが麻薬に耽溺し、意識が朦朧とした中で録音したかと思うと、その場にいたかような錯覚と臨場感を感じるのです。それから1年経過した時のサウンドなんかを比較するとたまらないものがあります。

 

また、録音日の記載だけではなくて、多くのジャズメンは1曲の演奏を、take1というようにtake2というように、何度か演奏して、その中から良い出来のものを選びました。後になり、take3take4などが発表されると、どこがどのように違って、なぜこのテイクが世に出たのかなど、考古学のように推測することも楽しいものであります。

マイルス・デイヴィスの「THE MODERN JAZZ GIANTS」の中に「THE MAN I LOVE」のtake1take2があります。ジャズの案内書にはよく解説が書かれていますので、知っているかたもおいのですが、失敗作としてのtake2のほうが有名となりました。ピアノのセロニアス・モンクの演奏に入らなければならないのに、モンクが出を間違えたのか、意識を外してしまったのか、ピアノとドラムだけが、リズムを刻んでいくシーンがあります。リーダーのマイルスがそれに我慢ならなかったのか、気づかせようとしたのか、トランペットを少しだけ吹きます。一瞬躊躇したようにモンクはマイルスの音を聞いて、にわかにピアノを弾き始めるのですが、こういった個々のギリギリの状態でのぶつかり合いがたまらなく面白く、その音源が残されて、このように失敗作でも話題作となり、失敗のないtake1より有名になってしまいました。その後、マイルス・デイヴィスは二度とセロニアス・モンクとは共演しなくなりました。1954年12月24日のことです。


こんなエピソードがたくさんあるジャズの魅力を教えて頂いたのが油井さんというわけです。ジャズなんていうものはメジャーとは決していえません。テレビで放映されるわけもなく、インターネットもない時代、ラジオと雑誌だけが情報源
でした。でも、何年、いやかえって何十年経過しても新鮮に聞こえるのはジャズをおいて他にはないように思えます。油井さんの著書に「ジャズの歴史物語」があり、それを読んで勉強しましたが、この本は良くまとめられていて、しばらく廃刊になっていましたが、復刊しています。しかし、まずは、理屈より、ジャズそのものを五感で感じることです。そこから自分の興味が分かり始めるもので、その興味の本質が分かり始めてから、理論や歴史を知ると、さらに興味が涌いてきます。それがジャズの魅力なのでしょう。



 


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