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キャノンボール・アダレイ




 

ボクはジャズを60年代の後半から聞きはじめましたので、50年代のビーバップからバップに移行するストリームにおけるプロセスはリアルタイムではなく、後付で理解したにすぎません。聞き始めた頃は、チャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンばかりで、彼らのリズム・セクション(ピアノ、ベース、ドラム)やホーン・セクションなどサイドメンのクレジットは当然、インパクトがあれば覚えているわけで、そうでなければ、やはり彼ら主役が中心で、サイドメンの名前は調べようともせず、いつの間にか記憶の彼方に飛んでしまいます。

 

キャノンボール・アダレイもマイルスのアルバム「1958MILES」で知りました。アダレイのリーダーアルバムを購入したのはそれから間もなくのこと。「MERCY,MERCY,MERCY」でアダレイの存在感を知ったのです。イントロでMC(アダレイ?)が喋りを被せていく手法に、ジャズをヒップホップとして感じさせてくれるノリありました。「MERCY,MERCY,MERCY…」とタイトルチューンを言い切ると、静かに鍵盤を叩いていたジョー・ザビヌルがあえてそのままの加減で弾き続け、そして遠慮深くアダレイ兄弟のアルトとコルネットがかぶります。クラブに来たお客さんのノリの良さもあってか、ライブの雰囲気が伝わってきます。日本公演でも「MERCY,MERCY,MERCY」を演奏し、サンケイホールでのライブアルバムとして発売されています。ただシカゴの雰囲気と違い、当時の日本の観客はおとなしいです。このアルバムは「WORKSONG」から始まり、続いて「MERCY,MERCY,MERCY」、そして「THIS HERE」でA面が終わります。アダレイの弟でコルネット奏者のナット・アダレイが作曲した「WORKSONG」はポピュラーな楽曲となり、一部のジャズファンにはあまりにもコマーシャルだという理由から敬遠されていましたが、いいじゃないの()、少しでもジャズが広まればと思いますが。ジャズのは1曲が長く、2、3曲聴いたらレコードをひっくり返さなければならず、このA面からB面へという感覚はCDにはなく、面倒!という人もいらっしゃいますが、この数十秒はB面の1曲目を聴く心の準備にもなったりして、インターバルの「マ」でして、アナログ的なこの空白感はアナログ時代の産物といえましょう。

 

マイルスのアルバムは、1958年からキャノンボール・アダレイがクレジットされているものが登場します。50年代最期の録音で、最高傑作と言われた1959年録音の「KIND OB BLUE」が、そして、58年に録音され散在していた楽曲を日本だけで1枚のレコードにした「1958MILES」がその代表でしょう。この中の「LOVE FOR SALE」では、マイルスのソロパートが終わるとキャノンボールのソロが始まります。まだ無知の時代に初めて聴いた時、この音がアルトなのかテナーなのか、はっきり分からず、キャノンボールの後にコルトレーンがテナーを吹くのですが、コルトレーンの音の強さと変わらないのでは、と思えるほどアダレイのアルトが豪快に感じたものです。アルトサキソフォンはポール・デスモンドのソフトでメローなもの、チャーリー・パーカーの早くて吹きまくる割には、豪快さとは無縁のテクニシャンを想像させるもの、アート・ペッパーのテクニックを見せびらかさずに洒落た感じで吹きまくるものがボクの中では主流でした。ですからこの豪快さはどこから影響を受けているのかとてもそそられましたが、実際の彼の体躯をみて、はは〜ん、と思わず膝を叩いたものです。

 

この1958MILESでの「LOVE FOR SALE」は1958年5月26日に録音されたもので、一方、ブルーノートから発表されたアダレイのリーダーアルバム「SOMETHIN’ELSE」があります。
実質はマイルス・デイヴィスがリーダーのようなもので、このアルバムの中にも「LOVE FOR SALE」があり、1958年4月9日の録音となっています。4月、5月と2ヶ月の短い間に、キャノンボールとマイルスはブルーノートとコロンビアに「LOVE FOR SALE」を残すことになります。聞き比べてみますと、マイルスがリーダーのほうがいい、という人も言う人もいれば、その逆もあり、まるで、肉を野菜と魚を与えられて、まったく違う手法で料理を作り上げたようなもので、その捉え方は千差万別でしょう。これは、マイルス・デイヴィスがコロンビアに移籍するにあたり、契約の残るプレスティッジで一気にレコーディングした中にモンクの名曲「ROUND ABOUT MIDNIGHT」があり、その曲を移籍先のコロンビアでも吹き込み、同じ時期の録音にもかかわらず、移籍先のコロンビアでのアルバムが売れてしまった経緯も思い出します。

 

ジャズは独特のリズム感にインプロビゼーションなるアドリブのスリリングなメンバー間の対決が面白さの特徴でしょう。同じプレイヤーが曲を演奏しても二度と同じ演奏はできません。そして録音された日がクレジットされていることが多く、前後の人間関係や音楽環境が明瞭になることで、さらに興味本位が広がるわけです。

キャノンボールはスタジオ録音での素晴らしいアルバムもありますが、ライブ録音されたアルバムにも、ライブ独特の緊張感とインプロビゼーションの妙味、他のメンバーとの時にはハーモニーが伝わり時には独りよがりの面もみえ、ビル・エバンスが「KIND OF BLUE」の解説で書いていた、「日本の墨絵は一度筆を下ろしたら、それで終わりなのだ、書き直しはきかない」という印象的なコメントと繋がっていくほどジャズは、ハーモニーと独創性が必要な音楽だということです。

 

アダレイの名盤を探そうとするとたくさんありすぎて見つかりそうもありませんが、スタジオ盤やライブ盤それぞれに良さがあり難しいところです。60年代はいいものがあります。50年代で選ぶとするなら、「CANNONBALL ADDERLEY QUINTET IN CHICAGO」がボクは好きです。アダレイのほかに、コルトレーンのテナー、ウイントン・ケリーのピアノ、チェンバースのベース、ジミー・コブのドラムという、サイドメンがマイルスのメンバーでして、コルトレーンとの掛け合いはスリリングです。1959年2月3日の録音です。

 

 

Love For Sale

mercy mercy mercy




 


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